陰の主役
絵画を目にするとそこに表現された世界観や色彩に目を奪われると思います。
実は、その絵には陰の主役が存在します。
皆さんは、絵画における陰の主役とも言われる膠(にかわ)の存在をご存知ですか?
もしくは、ゼラチンと言った方が聞き覚えがあるかも知れません。
皆さんが知っている食用のゼラチンとは少し違いますが、日本画の制作において岩絵の具と和紙を結びつける重要な役割を担っているのが膠です。
膠は、単に接着剤としての役割を果たすだけではありません。
例えば、膠と明礬 (みょうばん)を混ぜた水溶液で作る礬砂(どうさ)。
これを和紙全体に薄く塗ることによって絵具の滲み止めの作用を引き出します。
実は、絵画の制作がスムーズに進むかどうかは膠のご機嫌次第。
ご機嫌が悪いとイメージ通り制作が進まないことが多々あります。
すなわち、見えないところで絵の世界を支配している陰の主役なのです。
そんな膠ですが、近年、主に日本画で使用する膠の生産終了等により確保が難しい側面も出て来ています。
今後、日本画の世界が存続できるかどうかは、アーティスト達の頑張りだけでなく、画材を提供して下さっている人達の努力にもかかっているのです。